「リュウの道 第1回」

「よく最後まで連載を許してくれたね?」
どうしても、この事が聞きたくて、石森が最後の入院時に、僕が尋ねた一言。それは、1969年から週刊少年マガジンで連載が始まった『リュウの道』のこと。それだけこの作品は、石森章太郎という萬画家がなんの制約にも囚われず、自分のやりたいこと、描きたいこと、言いたいことを思う存分にやりきった作品だと思います。

石森作品で何が一番好きかと尋ねられたら、僕は迷いながらもきっとこの作品を挙げるでしょう。やはり、こんなにも突き抜けた作品にはなかなかお目にかかれないからです。21世紀を生きるリュウという名の青年が宇宙船で密航し帰還してみると、核戦争後の変わり果てた地球。

そこからリュウの旅が始まる物語。

ある時、そのスタンスに合致する雑誌と石森は出逢います。

「月刊COM」、1967年に虫プロ商事から創刊された雑誌です。作家性を重んじて、前衛的な実験が出来る場所だったと聞いています。

石森と映画の話をすると、好きなSF映画に、必ず登場するのが「2001年宇宙の旅」と「猿の惑星」、それに「宇宙戦争」。その中でも、「リュウの道」は先の2作品をリスペクトし、かなり影響を受けたことが窺えます。

導入部は「猿の惑星」で、物語終盤にリュウが神になってゆく様は、「2001年宇宙の旅」を彷彿させるほど、哲学的に描かれています。石森作品の中には、その哲学性を突き詰めて描いた作品もございます。それが、サイボーグ009『神々との闘い編』。「リュウの道」は最後まで描き切れたのに、作家性を尊重して実験作品を描くことを許された雑誌COMで打ち切りにならざるを得なかった「神々との闘い編」は、「リュウの道」にはあるエンタテイメント性に乏しかったからに違いありません。ただ逆に言えば、本当に描きたかった作品も、「神々との闘い編」だったのかも、、、。

これは、機会があれば、また後日お話しさせて戴きます。

連載開始が1969年、僕はまだ3歳です。少年時代に初めて読んでみたのですが、「リュウの道」は、少年にとって、これほど難しい作品はありませんでした。後年再び作品に触れた時、ようやくそのニュアンスは受け止められましたが、よくこの作品を少年誌で連載出来たとつくづく思い、先の質問に通じていきます。ただ、僕は声を大にして言いたいのは、紛れもなくこの作品は、SF作品の金字塔と言える大傑作だということです。そう思っている作品を、一度で語り終えるわけにはいきません。
また次回、『リュウの道』を熱く語らせてもらいます。

 

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