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「石森章太郎読切劇場 カラーンコローン・遠い日の紅 第2回」

石森にはお弟子さんが沢山います。
そう言うと謙虚な本人は、照れくさそうに“弟子”という言葉をやんわり否定すると思いますが、
古くは永井豪先生は始め、すがやみつる先生、ひおあきら先生など、アシスタントから巣立っていかれた先生方は多数存在致します。

その中で、シュガー佐藤先生のお話をしたいのですが、この先生、ずっとアシスタントとして働いておりました。
目が細くて、大人しい、謙虚な方です。
多作の萬画家のアシスタント業は多忙極まりないにも関わらず、家に帰ってからも、自作の萬画を描いておりました。
そして完成した作品を青年誌マンガ誌の新人漫画家登竜門の賞に応募したところ、入賞したのです。

審査委員の一人に、石森の名前がありました。自分にも厳しい石森は、愛する者にも、毅然と接します。
まるで、ライオンの親が子供を谷底に突き落とすように。
そんな厳しい目を持つ石森は、自分の弟子だからと言って賞を与えはしないでしょう。
本当に優秀な作品であったからこそ、「お前を認めたぞ」という証を押したのだと思います。

 

その優秀賞を受賞した時、佐藤先生のペンネームはグロテスク佐藤。
あんなに大人しい方が、こんな悪役プロレスラーみたいな先生の名前を付けたことに、先ず驚き、そしてもっと驚いたことは、その作品。
タイトルは「ガタンゴトン」。
田舎の過疎村を舞台に性と狂気を描いた作品でした。
佐藤先生がこの作品を描いたことにも同様に驚きを隠せませんでした。
絵やタッチは、石森にそっくり。そして描くその世界観も、石森もかつて描いておりました。

読切劇場を久々に読んで、佐藤先生の顔を思い浮かべました。
「カラ~ン・コロ~ン」というタイトルの響き、「遠い日の紅」の世界。
田舎の旧家で起きた殺人事件、そのエロチシズムと狂気の世界は、正に弟子である佐藤先生にも受け継がれていたのです。
佐藤先生のペンネームは、石森が新たに名付けて、シュガー佐藤と改名しましたが、佐藤とシュガー(砂糖)に掛けたのだと思います。
まるでたけし軍団のような名前の付け方に、少々笑ってしまった事を覚えています。

石ノ森が闘病中の時は、佐藤先生が「HOTEL」と「日本の歴史」を代筆しておりました。
グロティスクな作品ばかりでなく、シュガーのような甘いタッチも描けるところも、石森、石ノ森DNAを受け継いでいる証拠です。

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