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「星の伝説アガルタ 前編」

この作品は実に印象深い作品なのです。僕が小学生の時でした。直ぐご近所に丁度中学生のお姉さんがおりまして、「アガルタ」を連載している週刊少女コミックを愛読しておりました。ある日、僕のところまで来て、「あの後、どうなったか教えて」と聞いてきました。ある週のラストシーンの続きがどうしても知りたくて、翌週まで待てなかったようです。こんな近所のお姉さんまで、続きが知りたくて知りたくてウズウズしてしまう作品を描く作者はなんて凄いのだと、心から尊敬した事を覚えています。

作者は、男性が受ける作品を多く手掛けていると思われがちですが、以外にも女性層の支持も大変に多いことで知られています。現在活躍する女流マンガ家の方で、作者をリスペクトしている方も多いと聞きます。それに、「サイボーグ009」という作品は、女性層の支持から火が付いたとも聞いたことがございます。そもそも女性層に高い支持があった「サイボーグ009」の新作も同女性誌で何度も掲載しておりまして、その流れからの「アガルタ」の連載が始まったようでした。

そういう意味では、満を持しての連載です。その意気込みの表れとして、いきなりメタフィクションのプロローグから始まります。メタフィクションとは、簡単に言えば、ノンフィクションのようなフィクション作品の事を指します。この作品では、いきなり作者が登場し、「アガルタ」の主人公である黒木シュンが、アシスタントになりたくて、当時萬画のネーム書きやアイデアを練る時に使用した喫茶店に訪れるところから始まります。そのシュンが持ち込んだマンガが「アガルタ」というタイトル。

この物語を真実と言うつもりはない。本人が見たわけではないから。あとで聞いたり調べて繋ぎ合わせて、ほぼ真実に近づけて書いた物語だと作者自身のナレーションとして謳い、本編に入ります。メタフィクションのお手本のような作品です。

Mr.マリックさんだったら「ハンドパワー」というでしょう。マジシャンなら「種も仕掛けもございません」と言ってショーを始めるのと同じです。久々に読んでみたら、このツカミで、自分はのめりこみました。作者のファンでUFOニアの女性(橘レミ)とも、その喫茶店で出会い、恋におちる予感を匂わせます。物語創作の教科書のようなオープニング。

次回は本編のお話を―。

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