「少年同盟 後編」

決して布石のつもりで書いたわけではないとは思いますが、久々に読んでみると、「サイボーグ009」へと続いてゆく系譜のような印象を持ちました。「少年同盟」を書いたからこそ、「サイボーグ009」が書けるんだと、読みながら、そんな思いが駆け巡りました。

マンガというものが世に出始めたころ、正にマンガは子供達、少年少女のものでした。その時代に、少年誌や少女マンガ誌に綴っていた石森作品は、大人っぽ過ぎると批判が多かったようです。でも僕は、この「少年同盟」を読んでみて、明らかに子供達をターゲットにしている作品だと感じました。少年たちが読んで、楽しめるものを描こうという意欲に満ちたエネルギーを感じました。

この萬画の主人公は、正に少年たち。その子供たちが、タイトルの通り同盟を組んで、悪に立ち向かってゆくのです。子供たちの同盟と言っても、仲良しクラブのようなものではなく、かなり本格的。飛行機などの乗り物を乗りこなし、武器も使用します。誰しも、子供の頃は、自分が正義の味方になり、武器や乗り物を操る事を夢見るものですから。しかも、主人公が少年たちなのです。子供達からすれば、これほど夢のある物語はございません。誰もが憧れる姿なのです。

初期の作品は、対象読者の為に描いているというより、自分のやりたい世界を探求していくような姿勢が強い印象があったのですが、「少年同盟」をエンターテインメントに徹し始めたような思いを感じずにはいられません。子供達対象に楽しんでもらう作品のはずなのに、こんなオッサンになった自分が読んでも面白いのが、石森作品の凄いところ。もしかしたら、子供対象と言えども、この作品でさえ、大人っぽいのかもしれませんね。

そう思うと、少年マガジンに「リュウの道」を描いたわけですし、あの「佐武と市捕り物控え」を初めて発表したのも「少年サンデー」、この二作品などは、「少年同盟」のような、子供たちに楽しんでもらいたいという“優しさ”は、ほとんど感じられません(笑)

ですけど、「少年同盟」を読んでいた読者が成長して、大人になった頃に「リュウの道」や「佐分と市捕り物控え」と出逢う。確かに大人っぽい劇画が流行りだしたのも、その時期なのです。そして、「少年同盟」の読者が、その青年版を読みたいと思えば、その二年後から開始した「サイボーグ009」に触れ、青年ばかりでなく、ティーンエイジャーの女子からも多くの支持を受けることになります。

時代の方が、石森章太郎という作家に、合わせていくようで、その途中経過を知りたいのなら、やはり「少年同盟」を読んで頂きたいです。

 

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