石森のアシスタント希望の黒木シュンと出逢った橘レミの周辺で不可思議な現象が起こり、それをきっかけで秋田の山奥に向かう。謎の薬を飲み続けるシュン、秋田に残る遺跡や現象、その謎に迫ってゆくと驚愕の事実に出合う。簡単なあらすじは、こんな感じです。作者は古代遺跡や文明、UFOや超常現象などに昔から興味を持ち、ロマンを感じておりました。だから、作者が描くSF作品は、それが色濃く出る題材が多いのです。
今回紹介させて頂いた、この「アガルタ」も、その一つ。他惑星の人種が、この地球に訪れた時に事故に遭い、そこで生き残った者たちが、人間を作り挙げた。外見は蛇のような容姿の為に、地下でひっそりと暮らしていた。しかし、ある薬草で作った薬を飲み続けることで、人間の容姿を維持することが出来た。主人公のシュンもその一人。その他惑星の人種は、超能力を持ち合わせ、それを使ってしまったのがイエスキリスト。監視している仲間から、彼は殺されたという。薬を飲みながら、人間の外見を維持しながら地球上に住み続けた同種族は、その能力を使ったため、殺されていく。作者は、そこに古代文明が滅びた謎に絡めていた。UFOは、その他惑星人種の監視船。特殊能力を使用すると現れたのです。
この謎解き、神が宇宙人であるという設定。改めて「アガルタ」を読んでみて、自分の率直な感想は、僕が携わらせて頂いた「サイボーグ009・完結編」の設定に近いのです。これは僕の勝手な解釈ですが、もしかしたら、完結編用に温めていたネタの一つだったかもしれません。一番大事にしていた009完結編は、もっと捻った題材やオチをしようという覚悟を感じました。完結編用に温めていた題材を、もうここで使ってしまおう、それで完結編はもっと凄いアイデアにしよう、と。こんな感想を抱くのは、世界中探しても、きっと僕しかいないと思いますが(笑)
週刊少女コミックでも掲載した「サイボーグ009」のファンが、間違いなくこの「アガルタ」も愛読していたに違いありません。そのファンの為に、作者のサービスは、物語に少年が登場するのですが、ルックスが完全に島村ジョーなんです(笑)それと、「アガルタ」のエピローグで、作者のナレーション形式で、「もしボクの仕事場にアナタが訪れたら、きっと見ることが出来るだろう。シュンが座っていた机を」という言葉で締められています。
その後、女子高生などの萬画ファンが多数仕事場を訪れ、置かれた机を見て、感動して帰って行きました。女子高生たちで作る同人誌の取材で、アシスタントにインタビューしているのを聞いたこともあります。これもまた鮮明に覚えているのですが、あるアシスタントの方が、「黒木シュンは、架空の人物だよ」なんて言った人がいて、夢を壊すことを何で平気に言うんだろうと憤慨しました、僕は。
メタフィクションも立派なエンターテイメントです。「種も仕掛けもありません」と言って、ハンカチから鳩を飛ばすのと一緒なのですから。