テレビ番組の企画を同時進行で萬画連載することは、「仮面ライダー」が史上初だったそうです。その大ヒットで、石森章太郎という萬画家は、特撮ヒーロー界の作品にはなくてはならない原作者となりました。同じヒーローという枠で、作品毎に差別化を図るために、様々なアイデアの工夫が見られます。
この「ロボット刑事」は、読んで字の如く、ヒーローが刑事という設定も当時にしては奇抜ではありましたが、そのうえ、ロボットという設定は、とても斬新でした。コスチュームも昭和のいかにも刑事の典型のような出で立ちにさせ、敢えて、先鋭的なデジタルロボットと両極にあるレトロな雰囲気と融合させ、あえて対比させているようにも思えます。
あの帽子も典型的な刑事が被りそうな帽子で、ロボットに帽子、一見不似合いなコンビネーションですが、それが“味”に感じるのは、きっと僕だけではないと思います。
マンガ作品では、その帽子を目深に被り、正体を見せまいとするような印象ですが、それでもロボットらしき肌が露出しているデザインが、石森ヒーローらしい哀愁すら感じさせてくれます。
テレビシリーズでは、どうしても子供番組として創られますが、萬画作品は、作者がやりたい世界を具現化しています。「仮面ライダー」のコミック版を読んだ時も同じ感想を抱きました。とても、大人っぽく重厚なのです。しっかり人間ドラマを描き、切なさや哀愁をヒーローが抱えています。
「ロボット刑事」も、そうです。本格推理萬画として読めるほど、作品に漂うムードがあります。特に、主人公の母なる存在である、巨神ロボットの“マザー”などは、萬画ではとてもミステリアスに描かれており、崇高な存在で、宗教的でもあります。
当時のテレビ作品がチープだとは申しませんが、作者のイメージ通りの特撮ヒーロー作品が、日本でも製作出来るのなら、アイデアだけはなく、ハリウッドにも負けないようなヒーロー作品が誕生するに違いありません。
次回は、そのハリウッドと関連するエピソードをお話しさせて頂きます。