自分は俳優をやっていますが、演劇をプロデュースして、作品も創っています。
芸能の世界では、演技で最も難しいことは、人を笑わせること、とよく言います。
泣かせることより、笑わせることの方が、余程難しいと。
これは作品でもしかり、映画でも芝居でも、同じことが言えます。
マンガの世界の事はよくわかりませんが、少なからず近い印象を僕は持ちます。
石森章太郎という萬画家の凄いところは、描くジャンルが多岐に亘ることです。
SFも書けば、時代劇もある。チャレンジ精神が旺盛な当人からしたら、
その最も難しいと思われるジャンルに手を出さないわけがありません。
今回は、初期の時代の傑作ギャグマンガについて語りたいと思います。
“初期”と記しましたが、それがどれ程昔かと申しますと、まだ“ギャグ”という言葉もない時代。
その第一話は、“傑作ゆかいマンガ”と記されていました。三話目には、“こっけいマンガ”と。
そんな昔です。恐らく、テレビが普及し始めたばかりの頃でしょう。
そのような時世に、テレビ局を舞台に、テレビスターを目指して上京してきた子供の物語を描くんです。
これがどれほど新しかったか、容易に想像がつきます。
コピーライターの糸井重里さんが子供の頃に読んだこの作品に衝撃を受けたと、何かでコメントしているのを読んで、僕は思わず頷きました。
これを機会に、久々に単行本を開いてみましたが、他のストーリーマンガとは一線を引くように、絵のタッチも意図的に変えて、
最初は子供向けに分かりやすく描いているのが分かります。
その後、試行錯誤を繰り返し、回を重ねるごとに、タッチや構成などが安定してきて、石森ギャグマンガの一つのスタイルを確立していく様子がわかるので、
そういう見方をしてもとても面白い作品だと思います。