「サイボーグ009 神々との闘い編 後編」

「月刊COM」で連載が始まった、この『神々との闘い編』は、雑誌のコンセプトに合い、それまで連載していた『ジュン』の流れを踏むような、物語というよりは、イメージで紡いでいくような作風。以前書いた『リュウの道』の第二部や、スタンリーキューブリック監督作品の『2001年宇宙の旅』のような、哲学的な表現や展開を駆使した、前衛的な作品でした。

 

それまで、『天使編』の続きを、早く書き始めて欲しいと懇願し、脅迫文まで送ってくるほど熱狂的だったファンの人々が、今度は手のひらを返したように、作品を批判し始めました。

 

「自己満足で書くな」「話が全然わからない」「これは、009なんかじゃない」『ジュン』で受け入れられた手法も、『サイボーグ009』という世界の中では、全く受け入れることが出来なかったようです。昔は、ファンレターの宛先として、自宅の住所が平然と雑誌に載っておりました。なので、こんな辛辣な手紙が、山のように家に届きます。しかも、批判する人は、ほとんど住所も名前も書かない、匿名の人々。今のネット社会だったら、炎上でしょう。昔も今も、人を批判する人間は、決して名乗らず、姿も見せずに、影でいう者ばかりです。

 

 

それ以来石森は、匿名の手紙には、一切封を切らなくなりました。匿名で批判することが、ものすごく卑怯に思えたのと、本当のファンは失敗も受け入れる寛容さも必要ではないかと、子供心にもそう思ったことを覚えています。

色々と言われても、今のようにブログやSNSもない時代、言い返す場もなく、我慢することしか出来ない辛そうな石森の姿を目の当たりにして、その影響もあってか、自分は批判に対して、はっきりとモノを言うようになったのは事実です。

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