「ちゃんちきガッパ 後編」

転校生の主人公が、学生帽で黒マント、足元は下駄。昔ながらの出で立ちで、僕の中で学生帽が似合うマンガキャラクターは、「ドカベン」岩鬼と、このちゃんちきガッパが双璧です。「チャンチキおけさ」をよく口ずさむことから、ちゃんちきガッパと呼ばれるようになったようです。

一話完結で進む物語は、この主人公がのほほんとしながら、毎回起こる問題を不思議な超能力で解決していきます。つかみどころがない人物が、何も奇をてらわずに、問題を解決していく様が、この作品のムードと肌触りを作っているのでしょうね。

石森ギャグマンガの楽しみ方を、持論で一つお教えいたします。萬画をずっと読み続けている方々の為に、他の作品に登場するキャラクターが、別の役で登場するのです。これはきっと、読み続けている読者へのサービスだと思います。眉毛が繋がったスキンヘッドのオヤビンは、石森ギャグマンガにしょっちゅう登場する貴重なキャラクターです。

それともう一つ、石森ギャグマンガの代表作の一つ「ボンボン」の主人公が、この「ちゃんちきガッパ」では、同じボンボンという呼び名で女子高生で登場します。全く同じずんぐりとした体型で女子高生、しかも、悪ガキどもに服を脱がされ、イヤイヤしながら写真を撮られる、おしとやかな性格は相当笑えました。

僕もよく自分のプロデュース公演で、毎作品ご覧になる方にしかわからない小ネタを仕込むことがあるのですが、それはいつも足を運んで下さる観客の方へのサービスなのです。きっと、それと同じ意図だと思います。

最後に、一話完結の「ちゃんちきガッパ」の中で、僕が好きな作品を一つ挙げさせて頂くと、「泣いてた子」という作品です。迷子になり泣いている子を見つけ、自分の不思議な能力で、まず泣き止ませようと主人公は懸命になります。そして、今度は己の能力で、この子のお母さんを探し、見事に見つけ出す。今度はその行いが評判になり、“捨て子を引き受ける優しいお方”と書かれた置手紙と共に、子猫たちを主人公の寝床近くに捨てていかれて、今度はちゃんちきガッパの方が泣いて終わる、たったこれだけの物語なのですが、これをコミカルに優しさに満ち溢れたタッチで描いております。笑いとペーソス、キートンよりチャップリンを好んだ作者の世界が垣間見えるようでした。

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