いつもと違う夏だから、積極的にいつもと違う楽しみ方をしてみよう。重い荷物もいらない。移動でヘトヘトになることもない。と考えると、実際に遠くへ足を運ぶよりも、人間に与えられた「想像力」というチカラで旅するのも悪くない。この夏、石ノ森作品で、世界中を旅しませんか?(石ノ森作品なら宇宙や過去&未来へのタイムトラベル先も充実!)
現在タンザニア連合共和国に属するセレンゲティ(現:セレンゲッティ)は世界⾃然遺産であり、平時は密猟取締官を務めるピュンマが活動している地でもある。ちなみにエジプト(カイロ)は『サイボーグ009 ファラオ・ウイルス編』の舞台としても登場する。さらに、「裸⾜のザンジバル」というスピンオフもある。
最後は⽇本での舞台について触れておこう。長編『マンガ⽇本の歴史』をはじめ、さまざまな作品中に⽇本での光景が描かれているが、上京まもなく移り住んだトキワ荘(東京都豊島区)は、若きマンガ家として切磋琢磨し合った仲間たちとの想い出とともに、数多くの作品に登場する。『トキワ荘物語』『トキワ荘のチャルメラ』『ぼくの部屋にはベートーベンのデス・マスクがあった』『⾵のように…背を⾛り過ぎた⾍』『鋏』…。中でも『時ヲすべる』ではトキワ荘に加え、仲間たちとつくったアニメ制作会社スタジオゼロ(東京都中野区)も描かれている。
同作ではさらに宮沢賢治によりイーハトーブと名付けられたエリア、柳⽥国男の「遠野物語」の舞台である遠野市(どちらも岩⼿県)が活写されている。『サイボーグ009では北海道⼤雪⼭(幻の蝶編)や五島列島(イルカと少年編)ほか、数多くのストーリーが紡がれ、『仮⾯ライダーBlack』では那覇、京都、奈良、神⼾が舞台に。京都は明治維新間近の時代劇ギャグ『モー度やろう』にも登場する。⼭奥に残る不思議な遺跡や現象に思いを馳せたSFロマン『星の伝説アガルタ』で描かれるのは⼗和⽥湖(秋⽥県⿅⾓市)。
江⼾時代の東海道を舞台にしたロードムービー時代劇『流れ星五⼗三次』は、その名の通り江⼾から東海道五⼗三次を上洛する物語。江⼾といえば、⼈情味あふれる⼈々の描写と、見開きやコマ割りを生かした風景描写が豊富な『佐武と市捕物控』、遊郭で賑わう江⼾吉原を舞台にした『さんだらぼっち』をはじめ、江⼾時代のビジネスマンガとしても読める『⼋百⼋町表裏 化粧師』、実在の⼈物をモデルに描かれた『⼤江⼾医聞 ⼗⼋⽂』など、江⼾時代にタイムスリップしたような気分が味わえる佳作も豊富。また、歴史上の⼈物をテーマにした作品も多く、彼らの暮らしから時代の空気を感じることもできる。『北斎』では江⼾、『芭蕉』では “おくのほそ道” 、『⽯ノ森版⽴川⽂庫』では塚原⼘伝の⿅嶋(茨城県)、宮本武蔵の美作(岡⼭県)、猿⾶佐助の今治(愛媛県)が舞台となっている。
そして…⽯ノ森のふるさとが登場する『⼩川のメダカ』。この美しい掌編で、⽯ノ森が育ったころの宮城県登⽶(現︓⽯ノ森章太郎ふるさと記念館および⽣家がある)の⾃然を感じていただきたい。