たとえばトキワ荘にいたマンガ家の先生方って、もう世間では巨匠と言われていて。その人たちが描いた作品は、ある種神格化されているわけじゃないですか。それを読んで育った世代の方々は、もうその原作を崩してほしくないわけですよ。たとえばアニメにするにしてもセリフも変えてほしくないし、キャラクターも「原作そのまま」で動かしてほしいとか。気持ちはすごくわかるし、もっともだと思います。ただ僕は……作品のファンかファンじゃないかという観点ではなく…… せっかく映像という違うメディアに持っていくのであれば、原作とは違うものが見たいわけです。原作の絵がそのまま動くというのも、それはもちろん素晴らしいことなんだけれど。
個人的には、原作とまったく同じ話を、同じ絵で、アニメにしたり実写にしたりするのは、あまり面白さがわからないというか……。媒体を変えて同じことをやるより、せっかくなら全く違うことをやった方がいいし違うものを観たいと思う。自分はそっちの方が好きなんですね。ただ絶対に揺るがしてはいけないのは、芯の部分。
たとえば仮面ライダーなら「運命と闘う」とか。改造されているか否かといった設定ではなく、仲間がいても基本的に孤高であるとか、背負ってしまっているものがあるとか、いわゆるコンセプトです。
2016年3月公開の劇場版「仮面ライダー1号」のキャラクターデザイン。
2001年放送のテレビシリーズ「サイボーグ009 THE CYBORG SOLDIER」。誕生編からヨミ編など、原作マンガのエピソードを基に映像制作された。
2001年版アニメ009を制作したときに監督たちとも話したことですが、たとえば「サイボーグ009」というタイトルは「島村ジョー」を指すのでなく「9人全員」を指すんだ、と僕はずっと言っていた。だから誰かが“沈む”のはいやだ、と。一人欠けても成り立たない、9人のチームなんだと。一人一人が完全ではなく欠けていて、それを補い合いながら闘うのが、やっぱり009という作品のコンセプトであり、良いところですからどんなオリジナルストーリーをつくったとしても、その根幹は必ずぶれないようにしています。