第63回特別企画展「マンガ家入門展」レポート

手塚治虫をはじめ、藤子不二雄、赤塚不二夫、さいとう・たかを、鳥山明などなど、マンガの描き方をテーマに書かれた入門本は数多く出版されている。

文・撮影/今秀生

※このレポートで使用されている写真は、石ノ森章太郎ふるさと記念館の確認・承諾を得て、特別に撮影したものです。本企画展に入場される一般のお客様の写真撮影は、フォトスポット以外は不可となります。

入門本の中でも特にイメージされやすいのは1965年、当時27歳の石ノ森章太郎によって書かれた「マンガ家入門」だ。この時、前年の1964年に「サイボーグ009」は描き始めているが、デビューして10年足らず、いまの感覚で言えば入門書を書くにはまだちょっとキャリアが浅いように思えるかもしれない。しかしこの「マンガ家入門」は二つの点において画期的で、マンガ家予備軍の子供たちに衝撃を与えた。

まず画期的だった点は、石ノ森がどうやってマンガ家になったか、生い立ちからデビューまでの経緯、そしてどういう生活をしているのかが克明に記された点だ。今の時代と違い、当時の子供たちはそもそもマンガ家という職業の情報がなかった。マンガを描いたとしても、それをどうすればいいのかわからなかったし、生活の環境も状況もわからなかったのだ。

石ノ森は自身の経験を語り、日々の生活を語り、作家として生きていく事の覚悟を語り、マンガ家という職業のリアリティを語っている。「マンガ家入門」を読んだ子供たちは、初めて「マンガ家ってこうやってなるんだ」と知ったのだ。

そして詳細な技術論も画期的であった。自身の短編「龍神沼」を例にあげて、かなり理論的に様々なテクニックを解説していく。手の内を惜しげもなく晒していくその技術解説は明快かつ実践的で、読者に多大な影響を及ぼした。入門本のバイブルと語り継がれるにふさわしく、50年を超えた今読んでも有効な技術論には驚くに違いない。

石ノ森章太郎ふるさと記念館で第63回特別企画展として令和2年12月12日(土)からその両方の側面から「マンガ家入門」に焦点を当てた展示になっている。
ギャグマンガ「どろんこ作戦」とストーリーマンガ「龍神沼」をそれぞれ原稿と照らし合わせながら描き方や技術を解説し、「おかしなおかしなおかしなあの子」「フィンピーとぼく」などの作品を構想メモと並べてどう仕上げていったかを見せ、マンガ家になるための条件を石ノ森の言葉から拾い、マンガを描くための道具や石ノ森の愛用品も展示されている。

また、「マンガ家入門」の思い出やいかに影響を受けたかを実際にマンガ家になった19人の作家たちが語る色紙も展示。この展示のために描き下ろされた豪華な色紙はここでしか見ることが出来ない貴重なものだ。 ぜひ会場に訪れて見て欲しい。

【色紙参加の作家(五十音順・敬称略)】

上野顕太郎、うえやまとち、唐沢なをき、木村直巳、倉田よしみ、さいとう・たかを、佐伯かよの、里中満智子、志賀公江、島本和彦、新谷かおる、スズキスズヒロ、竹宮惠子、ちばてつや、はやせ淳、三浦みつる、みなもと太郎、吉田戦車、わたせせいぞう

※感染症拡大防止の観点から、開催延期あるいは会期の短縮を行う場合があります。またご入場人数を制限する場合もあるので、お越しの際は事前にご確認ください。
※館内では、コロナウイルス感染拡大防止策を実施しておりますので、ご来館の際にはご協力をお願い致します。
※「風邪の症状、発熱が4日以上続く」「強いだるさ(倦怠感)や息苦しさ(呼吸困難)がある」「咳が続く」といった症状のある方はご来館をお控えください。

会期:
2020年12月12日(土)~2021年3月14日(日)

観覧料:
大人 700円 / 中高生 500円 / 小学生 200円
※小学生未満の方は無料でご入館いただけます。
※身体障害者手帳、療育手帳、精神障害保健福祉手帳の交付を受けている方(介護人1名含)は、無料でご入館いただけます。

開館時間:9:30~17:00[入館は1時間前まで]

休館:毎週月曜日[月曜が祝日の場合は翌平日]・年末年始 12/29 ~ 1/3

企画制作■スピーチ・バルーン

協力■石森プロ/秋田書店

協賛■G-Too/トゥーマーカープロダクツ