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山辺浩一
株式会社 石森プロ
取締役
クリエイティブ部長

一度お会いした先生は“お父さん”でした。

まずは読者のみなさんに山辺さんの役割を。

 

山辺:

そうですね。僕の仕事はクリエイティブに関わる部分のベースを考えることで、おもに文芸的な側面を担当しています。

:文芸的な側面と言うと?

 

山辺:

作品のコンセプトから世界観、実際のストーリーをつくっていく仕事ですね。企画書もつくりますが(笑)。

:いちばん重要なところを担当されているんですね。

 

山辺:

いちばんというか…まぁたしかにとても重要な部分ではありますけどね。もともとマンガ雑誌のプランニングの仕事をしていたので、その延長線上で。

:どんなマンガのプランニングをしていたんですか?

 

山辺:

週刊少年マンガ誌で企画やマンガ原案などやってました。

:なるほど。

 

山辺:

番組だったら番組の内容をプランニングして決め込んでいく…たとえば『仮面ライダーシリーズ』だったらプロデューサーさんや脚本家さんたちと一緒に構築して、1年間こんなお話で展開しようと考えていく…ということです。

:『仮面ライダーシリーズ』にもずいぶん長いこと関わられてますね。

 

山辺:

Wからですから…あ、正確にはキバからなので、10年になりますかね。

: きっかけは何だったんですか?

山辺:

その前から玩具系プランニングもやっていたこともあって、いろんなところで石森プロの社長と顔を合わせていたんですね。その縁で声をかけてもらった感じです。

石ノ森先生とは実際にお会いしたことは?

山辺:

一度だけですが、お会いしたことがあるんです。むかし雑誌の企画で友達がインタビューすることになり、それで一緒についていったんですね。いちファンとして、009や仮面ライダーのことなど、いろいろ聞いて。とても気さくに答えてくださいましたね。

: そのときは石森プロの仕事をすることになるって想像してましたか?

山辺:

いえぜんぜん。ほんとにファンとして会っただけで。先生もお元気だったころで、まだまだ素晴らしい作品をたくさん描いてください!という気持ちでいましたからね。僕もマンガ業界にはいたので、偉大なる大先輩として眺めてましたが、まさか石森プロと関わって、しかも仮面ライダーを預かってなにかやるようになるなんて、まっっったく思っていませんでした。

 

: そのときの石ノ森先生の印象は?

山辺:

やさしそうな人だなぁ、という感じでしたね。子供のころから石ノ森先生のファンなので、なんかこう、お父さんぽいというか(笑)。うちの父と同い年で、しかも同じ東北出身なので、どこか似た感じするなぁ、と。失礼ながらそう思っていました。

先生の“少年っぽさ”を残したい。

: 石ノ森作品を手がける上で気をつけていることはありますか?

山辺:

時代性を考えつつも石ノ森スピリットは失わない、ということですよね。先生の作品って、いろんな人のいろんな見方があると思うんですけど、僕は少年っぽさだと思ってるんですよ。先生は晩年に至るまでピュアなところがあって、そんな部分を残したいと思ってまして。とくにヒーローものは、少年ならではの青さ…といいますか、平和への渇望、そういうものへの憧れがものすごく強くて、それを表現したいなと思っています。

: ライダー以外のヒーローも同じですね。

山辺:

そうですね。009ならジョーとかも象徴的だと思いますが、若者らしさ、自己犠牲。ともすると特攻みたいな美化するのは先生も違うと考えられていたフシがあるので、そこは注意していますけど。

: キャラクターを、時代に合わせて生み出していく、仮面ライダーの系譜をつなげていくところで、どんな難しさがありますか?

山辺:

仮面ライダーみたいなビッグコンテンツになると、いろんな方がいろんな立場で関わってくるわけですけど、そこをすり合わせながらブランドを守りつつファンに喜ばれる作品にしていかなければならない。それはやはり難しいところですよね。

: 胃が痛くなりそうです(笑)。

山辺:

そうですそうです(笑)。たとえば脚本家さんが世界観をつくることも多いので、脚本家さんが「こういうことをやりたいです」と持ってきたアイディアを、「石ノ森ワールドで考えるとこうなりますよね」というキャッチボールを重ねるんですね。ビルドなんかはそういう作品でしたね。

次のライダーはハジケていきます。そして…

: 次の仮面ライダーがいよいよ始まります。現時点でオープンできる情報は?

山辺:

まだ言えない事だらけですが、平成最後のライダーなので、“総括にして始まり”になったらいいなと思っています。記念作にふさわしい豪華な内容になるよう東映さんと一緒に企画を頑張っています!

 

: それはスゴイ!ファン垂涎ですね!

山辺:

そういうのを、単なるイベント的に終わらせず、新しいライダーワールドの可能性を見つけられるといいなと思っています。

: 平成ライダーが2000年から始まったから、来年でちょうど20年。子どものころに観ていたという人も立派な大人ですね。

山辺:

継続して見てくれてるライダーファンは勿論、子どものころに観ていたが、もう一度観たくなる、観てよかったと思える作品にしたいですね。

:そして今年は石ノ森先生の生誕80周年です。今後どういった作品を手がけていかれますか?

山辺:

先生はすごく未来を見通して作品をつくってこられた稀有な方ですが、それでもやっぱり先生が想像しなかった時代があるわけですよね。今だったら島村ジョーはどう行動するのか。本郷猛はどう考えるのか。そういうことをこれからも追求していきたいですよね。ノスタルジーにはしたくないので。

 

:つねに時代を捉えている…。

山辺:

さりとて流行りの、今風の、ばかり追っかけるのも違う気がして。風格というか、そういう感じは残したいですよね。009とか、ちょっと青臭いじゃないですか。あれが好きなんですよ。戦争に参加した国の若者たちが…赤ちゃんもいますけど(笑)、たった個人で集まって世界を平和に導こうという、崇高というか、そういうテーマがあるじゃないですか。そこは大切にしたいな、と。

 

:今の時代にも通じる…。

山辺:

個人は巻き込まれていくし、基本的に被害者じゃないですか。でも力を合わせると平和の礎がつくれる。少年っぽいけど人間として非常に大切な石ノ森先生の感覚がとても好きなんですね。先生の作品にはつねに人間を見つめる目と、さまざまな普遍的なテーマが通底しているので、いつの時代にも伝わるものがあります。そこをいろんな人に知ってほしいです。

:今回、日本テレビの「24時間テレビ」で先生の生涯がスペシャルドラマ化されることになりましたが、ギネス記録になったほど膨大にある作品も、より多くの人に知ってもらえるチャンスです。ぜひ、『仮面ライダー』をはじめ、もっともっと石ノ森先生の作品世界を広げてください!

山辺:

あんまり表に出るタイプじゃないので、ひっそりとがんばります(笑)。