〝カッコいい〟を飛び越えるヒーローデザイン

仮面ライダー 編

 石ノ森章太郎が生み出してきたヒーローたちのデザインに焦点をあてて、ラフスケッチや決定デザインなどを大公開します!何をヒントにして、どんな事を考えて、どこで悩んで、どのような行程で決定にまで辿りついたか、ぜひ石ノ森章太郎の頭の中を想像してみてください。
キャラクターとしてのヒーローを数えれば、日本とアメリカほど多くのヒーローを生み出した国は他にないでしょう。石ノ森章太郎も数多くのヒーローを生み出し、中でも「仮面ライダー」のシリーズはいまも子供たちを夢中にさせています。ヒーローを考える時、その時代や背景、キャラクターたちの性格や人生、多面的な物語設計や世界観などが必要とされるのは当然として、何よりも重要なのはデザインです。パッと見て、子供たちの関心を引かないデザインでは、どんなに面白いストーリーが用意されていても支持されないこともあるからです。仮面ライダーのデザインは、それまでのヒーローの概念を覆す画期的なものでした。別の言い方をすれば石ノ森でなければ考えつかないデザインだったかもしれません。

仮面ライダー

1969年(昭和44)、東映は石ノ森と新しいヒーロー番組の企画をスタートさせた。「マスクマンK」「仮面天使(マスクエンジェル)」「クロスファイヤー」「十字仮面」とタイトルを変えるごとに石ノ森は様々なキャラクターをデザインしたがなかなか納得出来ず、最終的に「パンチが欲しい」とバッタをモチーフにした「仮面ライダー ホッパーキング」を生み出しました。バッタは人間の顔と比べると目の位置が高いので、バッタらしさを残しつつアレンジされた結果、仮面ライダーの目は顔の高めの位置に配置されることになりました。このデザインの特徴的なベースは現在の仮面ライダーたちにも踏襲されています。番組は企画スタートから2年後、1971年にスタートしました。

仮面ライダーの描き方

①たまごをひとつ、かきましょう。

②それをわると、小さなたまごが2つでてきた。

③下の半分がガチャガチャにわれて・・・。

④ゴルフのボールとクラブが2本。

⑤小さなたまごをこまかくわると、黄味が流れて・・・。

⑥色をぬったら・・・ハイッ、できあがり

仮面ライダーV3・ライダーマン

仮面ライダー」が大人気の中、次のライダーをデザインすることになった石ノ森を最も悩ませたのは、〝ただのアレンジではなく、1号2号ライダーと全く違うデザインにするここと〟でした。よりサイボーグっぽいデザイン、顔の中心にVの字がくるデザインなど考えられた結果、顔の中心が蛇腹になっている斬新すぎるデザインが出来上がっていきました。

ライダーマンの口を出すヘルメットのデザインは早い段階で決定していました。手のアタッチメントのアイデアがかなり充実しているのに注目していただきたい。番組は1973年から1974年まで放送。

仮面ライダーX

メカニカルな仮面ライダーという方針にたどり着くまで、多くのラフスケッチが描かれたXライダー。昆虫という原点に立ち返ったカミキリムシやクワガタをモチーフにしたものやカタツムリをイメージしたデザインなど、石ノ森の発想の自由さに感心してしまいます。アクアラングのチューブがツインテールのようになっているのも可愛らしい。スカイライダーの原点のようなデザインもすでにあり、アイデアが湧き上がっていた様子がうかがえます。番組は1974年に放送。

仮面ライダーアマゾン

ムカシトンボをモチーフにした、まるで怪人のような初期デザインから、ドラゴンライダーと仮の名称で呼ばれていた時期を経て、オオトカゲをモチーフにすることに決定するまでのどのデザインも、もともとの仮面ライダーの異形性に再びフォーカスしており、石ノ森の力の入りようが想像できます。ヒーローに不気味さを求める、石ノ森の真骨頂と言えるでしょう。番組は1974年から1975年まで放送。

仮面ライダーストロンガー

カブトムシをモチーフにすることが決まった時点で、角をどうデザインするかが一番のポイントになったストロンガー。さまざまなバリエーションが考案され、中にはのちの「仮面ライダーアギト」や「仮面ライダーカブト」などにも影響を与えたデザインも残されています。当初は「仮面ライダースパーク」と呼ばれていましたが、商標の関係で胸のSの字を活かして「仮面ライダーストロンガー」と名付けられました。番組は1975年に放送。