『鉄面探偵ゲン』1

これは、『酔いどれ探偵鉄面クロス』の続編にあたる作品です。設定は全く一緒ですし、主人公がタコの足を加えているのも一緒。ただ違うのは、クロスがヒーローもの作品だったのが、こちらは本格推理マンガになっている事です。それに、微妙ではありますが、絵のタッチも意識して少し大人っぽく書いているような気がいたします。

最初に別冊少年マガジンで読み切りで書き下ろした『地底大迷宮』を読んだ時の衝撃は、今でも忘れません。1975年ですから、僕は小4だったと思うのですが、長編読み切りで、その独特のムードは大作映画を観た後のような、読後感だったのを覚えています。当時は角川映画で横溝正史原作の金田一映画が流行っておりました。金田一シリーズは小説も大ヒットし、一族や島、村など、そこに伝わる言い伝えや伝奇、怨念などをモチーフにした世界観は独特でした。まさにその時流に乗ったような大作でした。東京で起こった事件が発端で、舞台を田舎の小さな村に移し、白神家という一族が巻き込まれる事件を、その村に伝わるわらべ唄が事件解決の糸口になる。金田一耕助が登場しそうな舞台ですが、タコ足を加えたゲンが、この難事件を解決していく様は、横溝作品を石森章太郎が料理したら、きっとこうなるであろう展開と演出で、しっかり石森ティストを入れ、自分の世界にしています。

『鉄面探偵ゲン』は、『酔いどれ探偵鉄面クロス』の世界とは違うんだ、本当はこれがやりたかったんだと、100ページに及ぶ大作で、一気に知らしめたような気がします。『鉄面探偵ゲン』と聞いて、知らない人の方が多いかもしれませんが、最初に発表したこの「地底大迷宮」は、隠れた名作だと、自分はそう感じています。